僕が一番欲しかったもの
20年近い付き合いの友達からの連絡。
「平日の昼間、会えない?」
昔は、月に何度だって会えていたのに、今はお互いに
結婚して住む場所も少し遠くなって。
ここ数年、ゆっくり話ができるのは、1年で片方の指に
満たないくらいになってしまってた。
あんなピンチも、こんなピンチも、ああでもない
こうでもないと助け合って越えてきたわたしたち。
そんな友達からの連絡を断れるはずがない。
大体、普通はそんなこと言ってくる人じゃないから。
美味しいランチを食べて、足湯に浸かって。
ランチもスイーツも満喫してるのは昔と変わらない(笑)
平日の午後を満喫して、たくさんたくさん話をして。
最後に寄ったのは、スーパー(笑)
友達「なんかさぁ、こうしてると、感覚が昔に戻る気がする」
わたし「何言ってんの、昔は一緒にスーパー寄ったりしなかったじゃん」
友達「・・・そりゃそうだ!あっ、子供服50%OFFだって。
ちょっと見てくる!」
二人で買い物カゴを抱えながら。
幸せだなあって思った。
彼女はいつも、自分の体を使って生きている感じがする。
理屈だとか、本に載ってた情報だとか、そういうことじゃなく
感覚や気持ちを大事にして、しなやかに生きてる。
飾らない彼女の口からは、時々ハッとする言葉が出てきて
それを聞くと、自分の足が、ちゃんと地につく気がする。
「終活っていうの?そういうのをさ、した方がいいんだよ。
わたしたちの終活は、旦那さんと同じお墓に入れるように
仲良く楽しく毎日を過ごすってことだから。
お金があるとか、そういうことも大事かもしれないけどさ」
わたしと彼女は、数年前に同時期に妊娠をして
同時期に失った。
「そっちはどう?」
「ダメだったわ」
「こっちも」
「手術いつ?」
何度も行き来した携帯のメール。
経過を待つ間、少しだけ会って話もした。
わたしね、あの時、同じ経験をしている人が
近くにいて救われた。
わたしがそう言ったら、彼女は少し黙って
「そうだね、あれは一人じゃキツかった」
って笑った。
同じ経験をした人がいて「嬉しかった」わけでもなく
「ありがとう」でもなくて。
お互いに不幸ではあったけど「救われた」ことを
いつか伝えたいな、と思っていたから、言えてよかった。
盛り上がり過ぎて、彼女は子供のお迎えの時間を
過ぎてしまって、わたしは犬のご飯の時間を過ぎてしまった(笑)
慌てて「またね!じゃあね」って手を振った。
また近いうちに会えるといいな、って思いながら。